2005-05-21

まっとうなソフトウェア工学に期待すること

naoya さんのダイアリーに端を発してちょっとだけ議論が起きている。

まず naoya さんのオリジナルのポスト。 はてなが従来のいわゆる世間一般の開発手法を採用せず Perl でアジャイルな開発手法をを選ぶ理由として、 その開発するソフトウェアサービスの性質と 動的型付け言語の開発効率を挙げている。

対してオリオナエさんは naoya さんがソフトウェア工学を軽視している(ように見える)点を、 薬学と建築工学の例を使って批判している。

吉松さんははてなのサービスとオリオナエさんの薬の例のギャップを指摘して、 いわゆるソフトウェア工学的手法に疑問を投げかけておられる。

Don'tStopMusic さんもオリオナエさんの例とはてなの違いから いわゆるソフトウェア工学(と Java)ははてなには合わないという主張だ。

ここまで読んで思ったのは、みなさんの「ソフトウェア工学」感のずれだ。 それぞれソフトウェア工学に期待することが微妙にずれているので、 どうしても話がかみ合わないように見受けられる。

そんなときに思い出すのは檜山さんのこの文書だ。

檜山さんの記事を読むまでは僕もいわゆるソフトウェア工学に胡散臭さを感じていた。 だからといって職人芸的なアプローチについても、なんだか割り切れないものを感じていたのも事実だ。 僕はもともとは情報系の人間ではなく、学部ではロボットで遊んでいた人間なので、 ロボットの基本である機械工学といわゆるソフトウェア工学の差があまりに激しいのでびっくりしていた。 そんなところで檜山さんの言葉「どうでもいいソフトウェア工学」と「まっとうなソフトウェア工学」を得て、 やっとすっきりした。

たとえば REST アーキテクチャスタイルはまっとうなソフトウェア工学の貴重な研究成果だと思う。 もちろん REST を適用すれば何でも解決するわけではない。 でも REST スタイルを学んで設計開発するのと、何も知らずにどうでもいいソフトウェア工学で設計開発するのでは、 その結果の Web アプリケーションの品質や性能に大きな差が出るだろう。

それからはてなの成果、はてなフレームワークは Web アプリケーションフレームワークの実践としてとても素晴らしいものではないかと予想しているのだけれど、 それが優秀なハッカーの職人芸的な成果としてしか扱われないのであればとてもさみしいことだと僕は思う。 はてなフレームワークがオープンソースになったあかつきには、 アカデミックな研究者の方にぜひ、 その成功の秘訣をソフトウェア工学観点から解析してもらって、 それ以外のフレームワークに広く展開できるような研究成果をだしてもらえないものだろうか、と期待している。

1 件のコメント:

  1. 時期がかなり遅れましたが、
    簡単にコメントします。

    基本的には、
    「工学は科学をベースとして展開される」
    と私は思っています。

    そういう意味で、
    ソフトウエア工学を議論する前に、「ソフトウエア科学」を検討してみてはどうでしょうか?

    恐らく、
    「まっとうなソフトウエア科学が存在しない」
    事に気付かれると思います。

    また、私は
    「現在は、ソフトウエア技術だけが、実用主義的に迷・暴走している時代」
    であると思っています。

    これは、或る意味で
    「大学の堕落」
    を意味するものでしょう。

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